手袋の誤食

ガーデニング用のゴム手袋を誤食してしまったとの主訴で5ヶ月のゴールデン・レトリーバーが来院されました。誤食してからそれほど時間が経過していなかったため、催吐処置(薬剤を投与して吐かせる処置)を行いましたが、ゴム手袋は吐出できませんでした。

次に、内視鏡処置で取り出せなかった場合は開腹手術を行う必要があることをオーナー様に説明し、全身麻酔での内視鏡処置を行いました。内視鏡を食道から胃に入れてみると、ゴム手袋は腸に流れ込むことなく胃の中にあったため鉗子と呼ばれる器具でつかみ引っ張り出すことができました。誤食してしまった異物は通常、数時間程の間、胃の中に貯留し、半日以上経過すると、小腸・大腸へと流れ、便となって排泄されます。しかし、異物が消化不能な物で小腸の直径より大きなものである場合、小腸で詰まり小腸閉塞を起こします。

小腸閉塞なってしまった場合は開腹手術となり、動物の体へもかなりの負担がかかります。もしもペットが異物を誤食してしまった場合は早めに動物病院へ連絡してください。

異物の迷入(竹串)による膿瘍

夜中に高齢のウェルシュコーギー焼き鳥の竹串を飲んだかもしれないと、動物夜間救急病院に行ってレントゲンと内視鏡検査をしてもらったが、上部消化管には何も見当たらなかった。しかも、自宅に竹串が有ったようだという報告があった。しかしその後も状態が悪く、元気食欲無し、40℃の発熱、CBCで好中球増多があり、点滴と抗生剤の投与で体温は微熱にはなったが、食欲は戻らなかった。6日後肩の皮膚の色が変色し、壊死した部分が穿孔して、何と中から血膿と一緒に竹串が出てきた。数日前のレントゲン写真を見ると、気管や食道の背側にたくさんのガス像が存在していた。つまりそこに細菌感染があったことになる。治療後の写真はそのガス像は消失している。

 

 

 

異物混入(雑草の種子)による膿瘍

【異物混入による膿瘍】

首にできものがあるとの主訴で9歳のスタンダード・プードルが来院されました。

できものは肉芽様組織であり一部膿瘍となっていました。細胞診検査では細菌感染が見られたため追加検査として細菌培養検査を行い、抗生物質治療を行うこととなりました。

抗生物質により腫瘤は縮小していましたが、完全には良くならず再び細菌培養検査を行い、患部も切開洗浄を繰り返し行うこととしました。徐々に良くなり肉芽組織も縮小していたのですが、しばらくすると再度袋状の膿瘍となりました。

膿瘍を切開し綿棒で内部を拭うと【種子】が摘出され、その後の治療では急速に改善が見られました。

膿瘍内に異物があると、抗生物質を使用していても治癒しません。

どのようにして皮下に種子が入り込んでしまったかははっきりしませんが、激しく遊んでいる際に入り込んでしまったと思われます。

尿管結石による尿管閉塞が起因した膿腎症を伴った猫に左腎臓及び尿管全摘手術を実施した1症例

FIV陽性の猫が元気、食欲無し、嘔吐を伴って来院。T40.5℃の高熱、好中球の左方移動と単球増多を伴う白血球増多、X線検査で左側尿管に2つの尿管結石、エコー検査にて水腎症・尿管の拡張と2か所の尿管結石を確認。静脈輸液及びABPCとENFXの静脈投与を2日間投与しても熱はあまり下がらず、一般状態もあまり改善しなかった為、3日目に開腹手術による左側腎臓尿管全摘手術を実施。術後翌日から熱が下がり始め、2日後には正常体温となり、食事を食べ出した。術後3日目の血液検査で腎パネルはすべて正常、白血球もほぼ正常になったため、静脈点滴から皮下輸液に切り替え、翌日から通院になり、順調に回復した。摘出した腎臓を分割してみると拡張した腎盂には膿性の粘性を帯びた液体が大量に出てきた。細胞診をしてみると大量の細菌と変性した核を持った好中球と細菌の貪食像が多く見られ明らかな膿腎症となっていた。恐らくもう1日~2日手術が遅れていたら、敗血症や腹膜炎などが併発して救うことが出来ない状況になっていただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腸管穿孔による腹膜炎と小腸の多巣性、化膿性肉芽腫性腸炎を伴ったフェレット

元気消失・食欲不振・嘔吐・下痢が続き、対症療法や輸液で治療してもあまり改善がみられず、エコー検査で小腸内で流動物の停滞が認められた為、探査的開腹手術を実施。すると小腸の一部に穿孔があり、対側の小腸壁がその部分に癒着していた。また他にも腸間膜が小腸に癒着していたが、そこは腸壁が帯状にクリーム色に変色していた。まず穿孔した障壁の穴を縫合して閉鎖し、変色していた小腸は切除して病理組織検査をすることにした。病理所見は多巣性、化膿性肉芽腫性腸炎という結果だったが、コメントの中にフェレットは猫伝染性腹膜炎ウイルスと類似した病変を形成することがあるので、コロナウイルス感染症の可能性があるということだった。

 

 

 

 

 

10歳の柴犬の健康診断で見つかった肝細胞癌

10歳の柴犬が毎年行っているフィラリア検査と一緒に健康診断を兼ねた血液検査を実施した。昨年までは全く異常がなかったが今回はALTとASTという2つの肝酵素が高値だったため、念のためX線検査と超音波検査を実施した。X線検査で腹腔内に針のような細い金属らしきものが認められたが、飼い主様は心当たりがないとのことだった。また超音波検査では肝臓の外側左葉に約2㎝ほどの低エコー部と、右葉に複数の1㎝台の低エコー部が認められた。次に針状異物が管腔臓器内か外なのかの区別と肝臓のマス病変の確認のため、検査センターにてCT検査を行なった。その結果、針状異物は管腔臓器の外側に存在していることが判明。また造影剤投与後のCT検査で約2.4㎝の腫瘍らしいものが1ヶ所と複数の嚢胞と思われるものが確認された。その後肝臓外側左葉にある2.4㎝の腫瘤の切除と針状異物の摘出手術を実施した。肝臓の摘出腫瘤は病理組織検査で肝細胞癌だった。マージンの血管内浸潤はマイナスだったので、とりあえず一安心だが、定期的な検査は必要だ。肝細胞癌は遠隔転移はほとんどないが、肝臓内に再発することはあり得るため、経過を見ながら定期検査をすることが大切だ。いずれにしても、今回はフィラリアの検査と一緒に健康診断をすることで、針状の異物と肝臓の腫瘍が発見でき、さらにこの針状異物と肝細胞癌を摘出することが出来たため、健康診断の有用性が改めて確認できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CT検査の画像:左上が針状異物の存在位置。その他は肝臓の腫瘤が赤矢頭、黄色の矢頭で示したところは嚢胞と考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

犬の症候性てんかん(脳腫瘍による)

中年のフレンチブルドッグのてんかん発作で他院にて診断がつかず不安な為、お知り合いのご紹介でセカンドオピニオンを求めて来院した。脳以外の疾患からてんかん発作を起こしていないかを診断する為、完全血球検査・血液化学検査・X線検査・エコー検査等を実施し、ほとんどこれらの結果に異常が見られなかったので、脳の疾患が疑われたが、上部気道の問題があって、高度画像診断時の麻酔のリスクを心配され、飼い主様のご希望でまずはけいれん発作のコントロールをしていくことにした。その後ある程度けいれんのコントロールはできていたが、最近になって再度てんかん発作が目立つようになったため、MRI検査を実施したところ、下の写真のように前頭葉に塊状病変が存在していた。髄膜に沿った病変の為、髄膜腫が疑われるが、この犬種は神経鞘腫(グリオーマ)の好発犬種であり、髄膜腫は稀と言われている。飼い主様は当院まで車で3時間近くかかるところにお住まいな為、近隣の脳外科専門医がおられる病院で手術を受けていただくことになった。術後の病理組織検査の結果は髄膜腫ということだった。

 

 

 

 

 

 

てんかん発作を起こす原因には主に3つある。                   ①特発性(真性)てんかん:若い年代から発症し遺伝的素因                            ②症候性てんかん:脳腫瘍や脳炎や奇形                                ③反応性てんかん(脳以外の病気でてんかん発作を起こす)             これらを鑑別するにはまず脳以外の病気が無いかを各種検査により、ルールアウトして行く必要がある。そこで異常が無ければ脳の疾患ということになり、年齢が若ければ特発性てんかんとして、生涯治療をしていく必要があるし、年齢が中年~高齢であれば、脳の疾患を疑って、MRIなどの検査に進み、症候性てんかんのどのタイプかを診断して、それぞれに対応した治療をしていくことになる。

 

 

真性半陰陽の犬の避妊手術及びペニスの形態をした陰核部分の切除

メスの形態をした半陰陽の6か月のビーグルが、「陰部から突出したものをかなり気にして舐めたり、お尻をこすったりしている。不妊手術と一緒に突出したものを切除して欲しい」とのご希望があり、近医では手術ができない為、大学病院を紹介されたが、お知り合いのご紹介もあり、できれば当院で実施していただきたいと言うことで来院した。当院では以前に仮性半陰陽の手術経験はあるが、今回もそれと同様とは限らず、生殖器の形態も一様ではないこともご説明した上で実施した。子宮と卵巣の位置にあり、摘出した生殖器の病理組織検査結果:卵巣様組織は卵精巣(卵巣組織と精巣組織が共存している状態)であり、真性半陰陽と考えられる。膣から突出していたもの:陰茎骨を形成しているが、ペニスの正常構造の確認がされない発生異常組織。

 

 

 

膣から突出しているペニス様突起物

 

 

 

 

 

 

 

矢印は陰茎骨

 

 

 

 

 

卵巣と子宮のように見える生殖器

 

 

 

 

 

会陰部切開とペニス様突起物の切除

 

 

 

 

 

 

ペニス様突起物の切除

 

 

 

 

 

 

 

縫合を終えた時点の写真

 

ゴールデンレトリーバー(中年齢)の気胸

数日前から呼吸がおかしかったかもしれないが、昨日から明らかに呼吸が苦しそうということで来院。聴診上、左胸部の心音がかなり聞きとりにくかった為、X線検査を実施したところ、胸骨から心尖部が離れ、胸腔内に無構造のスペースが存在し、左の肺が収縮している画像が得られたため、気胸と診断し、すぐに留置カテーテルを使用し、漏れた空気を吸引し、その後低陰圧持続吸引機で完全に吸引できなくなるまで処置を続けた。その後酸素室にて安静を保った後、翌日レントゲン検査で漏れのない事を確認し、帰宅していただいた。肺のレントゲンで分かるくらい大きなブラ又はブレブが存在していた為、安静に勤めていただくように注意をさせていただいたが、退院後約1週間を過ぎた頃、再度以前同様の呼吸になって再来院した。今度は胸腔チューブを留置して漏れた空気を吸引し、その後状態が安定しているのを見計らって、応急処置として自家血を採取し、すぐに胸腔内にそれを注入し、穴の開いた肺の表面に血液が固まってシールしてくれることを目的に実施した。一時的に安定していたが、翌日になって再度気胸になったのと、胸腔チューブが閉塞して働かなくなったため、最終手段として肺葉切除しかないと考え、提携病院である日本動物高度医療センターに依頼して手術をしていただいた。CT検査の結果、X線検査でも見えていた大きなブラ又はブレブの存在が気胸の原因と考えられるということで、やはり肺葉切除以外に方法はなかった。術後の経過は良好で1週間ほど入院した後退院となり、現在も元気に過ごしている。

 

左のX線写真は初診時のラテラル像での気胸を示し、右は処置後心臓の頭側に大きなブラが見える

 

 

左のX線写真は初診時のVDでの気胸、右は処置後

 

下はCT画像で矢印の部分が大きなブラを示す

巨大食道症の犬

巨大食道症の犬

 

13歳の犬が「ここ数日吐いていて食欲がない」との主訴で来院しました。

 

身体検査にて可視粘膜がやや白く、重度の脱水がありました。また、吐き方を見ると嘔吐ではなく吐出(口や食道から吐き出すこと)であったため食道の疾患が疑われました。
血液検査では軽度の貧血、白血球数の増加や腎臓の数値(BUN、CREA)の上昇、甲状腺の数値(T4)が0.6μg/dlと低下していました。
レントゲン検査では消化管内には多くのガス貯留像があり、食道は拡張していました。

患者情報や検査結果を踏まえて巨大食道症と診断しました。

巨大食道症は副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症、重症筋無力症、腫瘍などの基礎疾患により惹起される場合や原因不明によるもの(特発性)があります。

オーナー様と相談により原因追求(基礎疾患の探査)は行わずに対症療法をしていくこととしました。

静脈点滴による脱水の緩和、消化管運動を亢進させる薬、食道炎・胃酸分泌を予防する薬、重症筋無力症の治療薬、甲状腺機能低下症の治療薬を同時に開始しました。

巨大食道症では食道の筋肉が機能しなくなっているために、食事が胃へと通過できずに食道内に停滞してしまいます。そのため、食事の際は器を高い位置に置くことで重力により食事が胃に流れやすくなります。さらに食後は抱き抱えて体を縦にするなど日頃の生活も工夫しました。患者様の協力もあり、定期的に皮下点滴をして食欲も戻り、吐出の頻度も劇的に少なくなりました。

 

巨大食道症は食道の筋肉が何らかの原因により機能を失い、食道が拡張し蠕動運動が低下することで、食物が食道に滞ってしまうことが問題となります。そのため吐出を繰り返し、吐出したものを吸い込むことで誤嚥性肺炎を起こします。
どうしても吐出が治まらない、ご飯も食べられない場合は、胃チューブを設置しチューブからご飯を入れて管理することもあります。