犬猫以外のペットアニマルを、総じてエキゾチックアニマルと呼びます。
一言で言っても、おなじみのウサギ・ハムスターから、フェレットやモルモットなど、多種多様な生き物が当てはまります。
彼らは自然界では被捕食者であることが多く、生存本能からかギリギリまで体の不調を表に出しません。症状が出た時にはもう手遅れということもままあります。なので、犬や猫と同等あるいはそれ以上に日々の健康チェックが重要になってきます。
飼育管理や病気に関して未解明の部分も多い分野ですが、一つの命として、犬や猫と同じように検査・治療を行うことを基本とし、それぞれに最大限のアプローチをさせていただきたいと考えています。
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ウサギ・チンチラ・モルモットは植物の硬い繊維を食べるため、常に歯と歯を擦りあわせているため歯が磨耗で削れます。
そのため切歯臼歯ともに生涯伸び続けるようになっています。しかし、歯の噛みあわせが悪いと歯が伸びすぎてしまったり、尖って口の中を傷つけ
てしまい問題を起こしてしまいます。この場合は歯を切る処置が必要となりますので、食べたいのに食べられない・よだれがひどい・歯軋りする・口をやたらと気にするなどの症状がみられた際には一度歯の健診を受けられてはいかがでしょうか?
食滞とは何らかの原因で消化管の機能が低下し食欲や排泄が低下する病気です。
原因はストレスや環境の変化など些細なものから異物摂取、毛球、膿瘍、腫瘍など大きな疾患が絡んでいるものまで様々です。また、ウサギは長期の絶食で肝臓にダメージが出やすいと言われていますので、元気食欲の低下が見られたら長期で様子を見ることなく早めにご来院して下さい。また、日ごろのブラッシングや健康管理を行うことで予防に努めてあげてください。
斜頚とは、中耳や脳などの平衡感覚に異常を来たして起こる病気で、突然首が曲がった り、目が左右に動いて止まらなかったり(眼振)、くるくる回ってしまったり立てなくなるなどの症状が出ます。急性期は食欲もなくなり、興奮して暴れるなど、ご自宅での管理が難しいケースもありますのでご相談で入院管理も実施いたしております。耳の膿瘍などで起こることもありますので、耳の汚れやすい垂れ耳のウサギさんは定期的な耳のチェックをしてあげると良いでしょう。
6歳を超えるメスウサギの9割近くが子宮疾患にかかるといわれています。症状は元気食欲の低下・突然の出血・血尿などで原因は内膜炎のようなものから子宮がんまで様々です。ウサギさんは体が小さく、少量の出血でも体に負担が大きいこと・悪性であった場合は高率に肺転移することなどから、繁殖を考えておられないのであれば早期の避妊手術をお勧めいたします。
ウサギは尿中へのカルシウムの排泄が多く、高率に膀胱結石が出来るといわれています。また、モルモットやチンチラも同様にカルシウムは正常でも排泄され、結石が出来やすいと思われます。体を動かさない・おしっこを我慢する・水分をあまり取らない・食事中のカルシウムが多いなどの要因で膀胱内に結石が出来やすくなります。普段から食事内容や水分摂取に気を配り結石を予防しましょう。
ハムスターの皮膚病の原因は、アレルギー・栄養性・細菌感染・寄生虫・腫瘍など様々です。ケージ内が汚れていたり餌のバランスが偏っているなども原因となりえます。皮膚が赤い・脱毛している・かゆがっているなどがありましたら皮膚病の可能性がありますので診察にいらしてください。
ハムスターは一般的に1歳過ぎると腫瘍が出来やすくなるといわれています。腫瘍には悪性と良性があり、ハムスターでは悪性が比較的多いと言えます。ハムスターは体が小さく、腫瘍を小さなうちに見つけるのは困難ですが、ちゃんと慣らしてあげることでいろいろな部分を触らせてくれるようになります。ぜひハムスターと仲良くなって全身のチェックをしてあげましょう。お腹部分は見落としが多いため注意です!
ハムスターは寄生虫、腫瘍、細菌のバランスの変化、異物など様々な原因で下痢をします。特に赤ちゃんハムスターの下痢や大人でもお尻がべったり濡れるほどの下痢は急速に状態が悪くなり、命にかかわる可能性があるので早めにご来院ください。
ハムスターもほかの動物と同様に子宮や卵巣の病気があります。症状は様々で、背中の脱毛、おなかが腫れてくる、血尿などですが、血尿が見られた際にはなるべく早い受診をお勧めいたします。
中年期以降のフェレットに非常に多くみられる病気で、3歳以上の50%以上がかかっているとも言われています。ホルモンの過剰分泌により、尾から始まる脱毛やかゆみ、メスでは陰部の腫れや乳頭の腫大・オスでは前立腺の腫大による排尿困難などの症状がみられます。症状にあわせて、手術やホルモン注射により治療を行います。
中齢期以降のフェレットでよく見られる病気で3歳をこえると30%以上がかかっていると言われています。初期の症状は、後ろ足のふらつき、寝起きのふらつき、よだれ、ボーっとしている等でご飯を食べることで改善します。重度の場合は、失神や痙攣発作、最悪の場合命にかかわるケースもありますので、インスリノーマを疑う症状が見られたら血液検査で検診をしておきましょう。
リンパ腫もフェレットではよく見られる病気でリンパ球が腫瘍化することによって起こります。病気にかかる年齢も様々で、どこのリンパ節が腫瘍になるかで症状も様々です。
現在はフェレットの治療も進んでおり、リンパ腫では抗がん剤治療の実施も可能となってきました。
何にでも興味を持つ若いフェレットは食べ物以外の物も食べてしまうことにより、消化管内異物が多く見られます。特にスポンジやゴム製品を好み、小さな落下物でも探し出して食べてしまいます。また、高齢のフェレットは長年のグルーミングによる毛玉で消化管内異物になるケースが多いようです。異物が確認された場合には手術が必要になってしまいますので、普段から床に何も落ちていないか確認しておきましょう。
フェレットに多い泌尿器疾患は、前立腺疾患、尿路結石、膀胱炎で多くは副腎疾患に関連した前立腺の肥大での排尿障害ですが時おり結石や膀胱炎も確認されます。
排尿困難になってしまうと命にかかわる緊急疾患ですので、日ごろから排尿頻度や排尿時間の異常がないか確認し、異常があった際には早めに受診してあげましょう。
フェレットの下痢や嘔吐には様々な原因があります。異物摂取やウイルス感染、中にはヘリコバクターと呼ばれる細菌の感染が起こることもあり胃潰瘍や胃炎を起こしたりします。他に多いのが消化管の腫瘍です。慢性的に続いている下痢や嘔吐の場合、大きな疾患が隠れている可能性がありますので早めに受診しておくと良いかと思います。
ハリネズミでは皮膚の感染症にかかっている可能性がかなり高いことが知られています。原因としては真菌やダニがあり、簡単な皮膚の検査で見つけることができます。
皮膚の感染症にかかると、体をよく掻く、ふけが多い、針が抜ける、はげてくる、かさぶたが増える等の症状が現れます。簡単な検査で診断が可能ですので、健康診断がてらご来院してみてはいかがでしょうか?
近年、丸まらないハリネズミが増えたこと、病院を受診していただける機会が増えたこと等によりハリネズミにも子宮疾患が多いのではないかということがわかってきました。
主な症状は、元気・食欲の低下、そして出血または血尿が起こってきます。
小さい体ですので、大量の出血は大きな負担になります。もし出血が見られた場合は早急な受診をお勧めいたします。
ハリネズミは口の中に腫瘍ができることが多く、なかなか口の中を見ることができないことから発見も遅くなってしまうケースがあります。症状としては、口から血が出る、ご飯に時間がかかる、ご飯を落としてしまう、うまくくわえられないなどです。普段から食事の様子を観察してあげることで早期発見につながるかもしれません。
比較的若いハリネズミに起こる病気で、はじめは後ろ足のふらつきそして徐々に立てなくなってしまう病気です。残念ながら現在は有効な診断方法や治療が確立されていませんが、より良い生活を送らせてあげるようにケアすることが大切です。
フクロモモンガは食事の選り好みが多く、栄養バランスを崩すことによって発作や骨折、震え、立てない、脱毛などの病気を引き起こします。日頃から栄養が偏らないようにいろんな食事をあげるように気をつけてください。発病してしまったら大きな発作が起こる前の初期症状のうちに治療を開始しましょう。
フクロモモンガはもともと集団生活を営んでおり、単独飼育のストレスやホルモンバランスの異常、運動できないストレスなど様々な要因で自分で自分の体をかじる自咬を起こしやすくなると言われています。特にしっぽやペニスの自咬が多くなかなか止まりません。ひどい場合、内蔵をひきずりだすケースもあるので早期のご来院をおすすめします。
単独飼育の場合はなるべく遊んであげたり、放してあげる時間を作ってあげましょう。
発情過多により卵を産み続けることによって起こります。長期の産卵で母体のカルシウムが欠乏し、卵の殻が柔らかくなることで生むことが出来なくなります。卵詰まりを起こした場合、その前の卵がやわらかい・羽根を膨らませている・床でうずくまっている・食欲がない・お腹が張っている・お尻をふって呼吸しているなどの症状がみられます。この様な症状がみられた際には安静にして暖かく保温し(30度くらい)早めにご来院下さい。また、しっかりとカルシウムを与え、日光浴をし早寝早起きの規則正しい生活を送ることで卵詰まりを予防しましょう。
鳥さんは種類により様々な消化器疾患にかかります。原因としては、寄生虫・細菌感染・真菌感染・腫瘍・中毒などがあり、多くの症状は食欲の低下・羽根を膨らませている・嘔吐(下に吐く子と振りまいて吐く子がいます)あくび、下痢、緑便、血便などが起こります。 鳥さんは羽根があるため体格が分かりづらく、気づいたら重症でかなりやせていることもあります。毎日、食欲やウンチの大きさを観察し、出来れば体重測定も行っておくと早期発見につながります。
寒さに弱い鳥さんは、特に季節の変わり目に呼吸器の病気にかかりやすくなります。くしゃみや鼻水・結膜炎や目が腫れるなどが主な症状で、抗生物質の内服やネブライジングで治療を実施します。寒暖差の激しい時期は保温球を併用するなどして気温差が出にくいように注意しましょう。
手乗りさんに多いのですが、放鳥中にちょっと目を離したすきに・・・踏んでしまったり、ドアにはさんだり、おなべに落ちたり、異物を飲み込んだり、中毒物質を摂取したり、逃げられたり。こんな事故は結構あるものです。後で悔やむ前にちょっとした注意で予防に努めましょう。
近年、マンション住まいなどが増え、エキゾチック動物の来院頻度が増え、ご来院いただく動物種も多様化してきました。どの子も大切な家族の一員であることに変わりはなく、犬猫はもちろんのこと、エキゾチック動物にも十分な治療・看護ができるように日々、努力・勉強していきたいと思います。