10歳を超えたワンちゃんは人でいうと50歳代(小型・中型犬)〜70歳代(大型犬)に相当するといわれています。
一般に動物はがまん強く、痛みを訴えることができないので、飼い主様がギリギリまで不調に気づきにくい傾向があります。
そのため健康診断を受けて状態を把握してあげることがとても大切です。高齢になれば半年に1回程度を目安にしましょう。
ワンちゃんは人間の4〜5倍の速度で年をとるので、年1回でも人でいえば4年に1回でしかありません。
このページでは10歳以上のワンちゃんとの暮らしで気を付けていただきたいことを記載しています。
基本的な予防や病気については、「ワンちゃんの健康管理」についてのページをご覧ください。
人間 | 56歳 | 60歳 | 64歳 | 68歳 | 72歳 | 76歳 | 80歳 | 84歳 |
小型・中型犬 | 10歳 | 11歳 | 12歳 | 13歳 | 14歳 | 15歳 | 16歳 | 17歳 |
大型犬 | 8歳 | 9歳 | 10歳 | 11歳 | 12歳 |
当院ではシニアのワンちゃんに向けた取組みとして、シニア動物全般に向けた獣医療をご提供するシニア科の開設や、シニア期に多い病気にも専門的に対応できる専門診療科の開設などを行っております。
シニア期になると、これまで継続してきた4大予防(①狂犬病予防接種、②ワクチン接種、③フィラリア予防、④ノミ・ダニ予防) をやめてしまう飼主様も出てきます。これらの予防はワンちゃんの健康の基本となります。しっかりと継続してあげてください。
定期的に健康診断を受けるメリットは、健康時の検査数値を把握しておけることです。
一般的な基準値は、多くの外見上健康なワンちゃんのデータを集め、範囲を設定しています。そのため必ずしも全てのワンちゃんが当てはまるとは限りません。
健康時のデータを把握していれば1回の検査で異常値が出ても、むやみにそれ以上の検査にすすむ必要がありません。
年を重ね高齢になるにつれて、徐々に様々な機能や免疫力が弱くなっていきます。目や耳、鼻などの感覚機能も同じように低下します。また白内障などの病気にかかるワンちゃんも多くなってきます。生活環境、習慣も、体の変化に合わせて変えていく必要があります。
病気だけではなく認知症の可能性などもありますので、日頃の生活の様子も合わせて獣医師にご相談ください。
心臓や腎臓の病気、がんなどは、発生した初期段階では症状があまりないため、健康診断での早期発見が大切です。痛みなどの症状が出るころには手遅れとなっているケースも…。定期的に健康診断を受けることが、病気の発症を遠ざけ、元気で長生きするカギと言えるでしょう。
健康診断では、身体検査・血液検査・尿検査・糞便検査・レントゲン検査・エコー検査等を組み合わせて行っていきます。これらの検査は鎮静や麻酔をかけずに行うことができるためワンちゃんに負担をかけずにできます。詳しくは病院スタッフまでお尋ねください。
心臓は生命を維持する上でとても大切な臓器のひとつです。しかし、特にチワワやシーズー、マルチーズなどの小型犬は「弁膜症」という病気になりやすいといわれています。弁膜症とは心臓の中にある4つの部屋を分ける弁(ドアのようなもの)が上手く働かなくなり、血液を全身に送る事ができなくなってしまう病気です。咳をするようになった、お散歩の途中で疲れやすいなどの症状が出てきます。一度心臓病になると完全に治すことは難しいですが、早期発見することでお薬や処方食での治療を始めれば進行を遅らせることができます。
加齢と共に眼の中心が白っぽくなる変化に「白内障」と「核硬化症」があります。核硬化症は水晶体というレンズが硬くなり、すりガラス状に見えるようになる老齢性の変化です。見えづらくなりますが、失明はしないため生活に支障は出にくいです。同じような眼の見え方で気をつけなければならないのが白内障です。進行すると視力低下や失明したり、炎症を起こすと痛みを伴ったりし ます。白内障を早期に発見できれば進行を遅らせる点眼薬もあります。
ワンちゃんの死因第1位はがんです。加齢と共にがんはできやすくなり、比較的異常を確認しやすい体の表面にできるがんもあれば、肺・肝臓・骨など眼に見えない臓器のいたるところにできるがんもあります。特に肝臓や脾臓などはがんができても症状が出ることはなく、気づいた時には手遅れということもよくあります。がんを早期に発見できれば手術、抗がん剤、放射線治療などで完治または進行を遅らせることができます。
はっきりとした原因は分かっていませんが、症状は進行性で完治は望めません。周囲を確認する能力や刺激への反応性が低下していくようになります。日本犬(特に柴犬)に多く認められ、大型犬では早いと7歳位から、小型犬では早いと12歳位から症状が見られるようになります。
残念ながら有効な治療法はありませんが、進行を遅らせることが可能です。早期に認知症と診断できれば「脳を働かせる」努力をしながら、薬や抗酸化サプリメントを与える事である程度の効果が期待できます。
人間の認知症患者では『見つめる』『話しかける』『触れる』『寝たきりにしない』が大切だと言われています。ワンちゃんの場合でも同じ事が言えると思います。できる限り「脳を働かせる」ようにするのがポイントです。
関節の変化
年をとると、若い頃に比べ動きが悪くなり、遊ばなくなったりします。
これを老化現象と勘違いしがちですが、関節の軟骨部分がすり減ったり破壊されたりして、股関節・肘・膝・肩など様々な関節に痛みが出る「変性性骨関節症」という病気である可能性があります。また、ダックスやシーズーは背骨の神経が圧迫され痛みや麻痺が出る「椎間板ヘルニア」が出やすい犬種です。どちらもサプリメントやお薬を使い、痛みを軽減してあげることで、お散歩や遊ぶ時間が増えるなど生活の質が上がる可能性があります。