1年以上前から嘔吐がある犬に何が起きていたか

他院にて昨年9月頃より慢性の嘔吐の治療を受けていた7歳の雑種犬が、ここ1週間位前から元気食欲がなくなってきたということで、2件目の病院からご紹介で来院した。この子は昨年来、低蛋白血症があった為、蛋白喪失性腸症の疑いでステロイドの治療を受けていた。ただステロイドの内服をしていても嘔吐は相変わらず存在していた。また3月頃から投与量を減らしたり、投与間隔を空けたりしていた。

一通りのルーチン検査(完全血球検査、血液化学検査、X線検査、超音波検査) をした結果、血液検査では白血球(好中球・単球)の増加、アルカリフォスファターゼの増加、電解質の全体の低下、犬特異的リパーゼ活性の高値、凝固系の時間の延長などがみられた。X線検査では十二指腸内のガス像やその他の小腸内の異常ガスが認められた。超音波検査では胃及び小腸内に液体が溜まっており、腸管内でその液体がほとんど動かず、腸管の動きがあまりなく留まった状態だった。飼い主の方と相談の結果、原因が分からないままの治療では、死ぬのを待つだけになるので、開腹してつき止めてくださいとのことでしたので、試験的開腹をした。その結果、開腹したとたんに濁った少量の腹水と異臭が放たれたのと、十二指腸近位の2ヶ所に腸管穿孔があり、膵臓には1㎝ほどの小さな腫瘤があった。穿孔部分は色が黒ずんでいた為、全体を切除し縫合した。また十二指腸・空腸・回腸をそれぞれパンチバイオプシーをして、病理組織検査に出した。そのことで基にあった疾患の特定ができるかもしれません。術後腹腔内を6リットルの生理食塩液で洗浄し腹腔内に漏れた糞を完全に近く洗い流すことをした。写真は上から①十二指腸の穿孔部分、②その穿孔部を切除縫合した後、③膵臓にあった小腫瘤、の順。病理検査の結果を見ないと確定はできないが、ステロイドを長期間投与していたために、十二指腸に潰瘍を起こしたり、膵炎が合併したのではないかと考えられる。   
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