6階のビルから落下した猫(フライングキャット症候群)

 

6階のマンションから落下した6ヶ月齢の猫が救急で来院した。来院時はショック状態でうずくまった姿勢のまま動かなかった。鼻出血と口腔内からやや出血があり、呼吸速迫で頭頚部の辺りを触れるだけで怒り出す。静脈を確保し輸液開始、鎮痛剤投与、酸素吸入、ICUで絶対安静。X線検査で肺の挫傷と思われる右の肺全体の間質及び肺胞パターンを示していた。左の第1肋骨の骨折はあったが、それ以外の骨折はない. その後の経過は順調で翌日には呼吸はほぼ正常になり、食事を少しづつ食べ出した。翌日の夕方にレントゲン写真を撮り、来院時のものと比較すると肺の病変が改善しているのが分る。4日目には状態もまったく戻り、原則安静ということで退院した。
 

 

上の写真:左から受傷後、治療後12時間の肺の状態、第一肋骨の骨折

 

 

上の写真:左から受傷後、治療後12時間の肺の状態、回復して食事をしている患者さん。

以下はウェブサイトで検索した中の文章を引用させて頂きました。

フライングキャット症候群(flying cat syndrome)、またはハイライズ症候群(high-rise syndrome)猫高所落下症候群とも言われますが、昨年発表された論文では、平均落下階数は2.65階。そして落下後生存したのは98.8%、さらにその後後遺症により安楽死をした猫を死亡頭数に加えると、生存率は94%であったと発表されています。

つまりそれほど高くない高さから落ちても6%の猫は亡くなるあるいは重大な後遺症が残ることを意味しています。

猫はバランス感覚に優れ、落下中に体勢を整えるので2~3階から落ちても無傷のことが多いですが、死亡例もあります。

高所から落下した場合怪我をしやすい部位は四肢、顎、頭蓋、胸部です。外見上異常がなくても肺が破れていたり骨折していることがあります。

2階以上で猫を飼っている方は低層階だからと安心してベランダに猫をださないこと、窓を開けっ放しにしないことを徹底することが最大の予防です。

時間的猶予があれば体勢を整えまた足周りの皮膚をひろげムササビのように空気抵抗を稼ぎ落下速度を落とします。

そのため7階以上から落下した方が怪我が少ないのではないかと経験的に言われています。つまりもし同じような状況,地面で落下した場合に怪我をしやすい順に並べると

3〜7階>7階以上>2〜3階

となります。ただこれはあくまでも仮説です。計算上猫の体重と体積からいくら高くから落ちても時速100km/hは超えないそうです。

高所からの落下は様々な報告がありますが、どれが一番高いかは不明です。ボストンの白猫シュガーは19階から落下し軽度の肺挫傷以外全く無傷だったそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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