急な元気消失、虚脱状態で急患外来で運び込まれた11歳のダックスフンドのX線検査(写真①)と超音波検査で、脾臓(写真③)および肝臓に大小の腫瘤(写真④)があり、腹腔内には液体(血液)が貯留(写真②)、心臓のエコーでは右心室壁の腫大(写真⑤)があった。血液検査では再生性貧血を伴いヘマトクリット値が1ヶ月前の数値より19%減少していた。すぐに輸血準備をしてクロスマッチテストを確認した後、約200ccの血液を供血犬から採血し、輸血をしながら手術を実施した。開腹すると腹腔内は血液で満たされ(写真⑥)吸引してみると約300cc溜まっていたことが分かった。出血部位は脾臓の腫瘤と肝臓の腫瘤の2箇所であった。写真⑦は摘出した脾臓、写真⑧は肝臓の病変部です。
病理組織検査の結果は脾臓および肝臓の腫瘤はいずれも血管肉腫だった。脾臓に関しては完全切除になったが、肝臓は肝臓全体に大小の腫瘍が存在していたことから、不完全切除であり、残った腫瘍が今後増大し、再度そこから出血することは充分考えられる。更に心臓の右心房の壁にも腫瘤があることから、こちらからの出血で心タンポナーデになることもあり得る。
飼い主の方には術前からこのことはお話させて頂いていたので、ご理解いただいています。また寿命に関しては長くて3ヶ月、短いと1ヶ月またはそれ以内のこともお伝えしました。このように血管肉腫はとても悪性度の高い腫瘍ですので、やはり早期発見、早期治療が大切になります。
写真①
写真②
写真③
写真④
写真⑤
写真⑥
写真⑦
写真⑧