年齢1歳の若い猫さんが2日間外出して帰ってきたら、元気食欲が無く、ぐったりしているといということで来院。触診で膀胱は重度の膨満(写真①)、血液ルーチン検査では白血球のかなりの上昇と尿素窒素とクレアチニン、リンが異常な高値を示し、腎不全になっていることが分かった。レントゲン検査ではやはり膀胱の膨満と腹水の貯留が疑われた(写真②)。尿閉がありそうなので、尿道カテーテルを挿入したところ、血様の液体が抜けてきた。しかし液体を20cc程吸引しても膀胱のサイズは縮小しなかった。そこでカテーテルを挿入したままX線検査をしてみたら、カテーテルが尿道の途中あたりから腹腔内に逸脱していた(写真③)。つまり腹腔内に貯留していた液体をカテーテルから吸引していたことになる。この状態では益々腎不全が進行し、尿毒症になって回復の見込みが無くなってしまうので、飼い主さんとのお話し合いで、状況把握のための試験開腹も兼ねて緊急手術(輸血準備下で)をすることになった。術中の写真が④と⑤だが、腹腔内には薄い血液様の液体(尿臭あり)が溜まっており、写真にあるように膨満した膀胱が黒く変色しており、血行がなくなっている感じがした。実際中を探査してみたら尿道の断裂と血管の断裂が見つかり、結局膀胱は血行が遮断されたため、壊死をしてしまっている状態だった(写真⑥)。何らかの外力によって起きたものだと考えざるを得ないが、腹部の体表には何ら外傷らしいものは無く、交通事故の証拠も無いので、原因は分からない。これは手術による回復は見込めないため、飼い主さんと相談の結果、麻酔のかかっている状態で安楽死になった。
病理組織検査の結果は「膀胱の全層性出血壊死」:外傷などによる急性の出血壊死の可能性が考えられるとのコメント。
写真①
写真②
写真③
写真④⑤
写真⑥