猫の胸腔の悪性中皮腫

14歳の日本猫が約1ヶ月前から食欲が低下、1週間前より元気食欲なく、呼吸が速く荒いということで来院。血液検査では白血球増多(好中球増加)ストレスによるやや高血糖、やや低蛋白、それ以外は正常だった。呼吸速迫と聴診で心音が聞こえ難いということがあり、X線検査をしたところ、写真①の左のように胸腔内に液体が貯留していることが分かり、胸腔から穿刺により380ccの液体を排液することができた。写真①の右は胸水の抜去後。この採取した胸水の直接塗抹および沈査の塗抹標本を鏡検してみると多数の中皮細胞(写真②)があり、好中球やマクロファージといった炎症細胞がほとんど無いことから、中皮腫であることがわかった。病理医にも見ていただいたところ、4つ以上の核の悪性所見が何とかクリアーした(写真③の中央の中皮細胞は核の分裂像)ので、悪性中皮腫と診断して良いでしょうという結論だった。いずれにしても高齢であることと、猫の中皮腫の化学療法(胸腔内投与)による治療は、犬で使われているシスプラチンは猫には毒性が出やすいため使えません。恐らく同じ白金製剤のカルボプラチンを使うことは出来そうですが、効果がどの程度あるかのエビデンスは症例数が少なく、ほとんど皆無に等しい。この猫さんは10日余りでまた胸水が貯まりだし80ccほど採取できたが、今後の化学療法剤の使用については飼い主の方と充分相談の上決定していくことになる。

写真①

写真②

写真③

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