11歳のアイリッシュセッターが最近時々後肢を跛行することがあるということで来院。よく診ると趾骨部の腫大と爪床部に角下を伴った腫瘤(写真①)があった。この部分は圧痛があり、肉球の腫張(写真②)も伴っていた。そのため病変部のX線撮影をしたところ、末節骨(爪の付け根の骨)が融解している(写真③④)ことがわかった。この腫大した病変部の針生検の細胞診では細胞の原形質が割に青く染まり、大きめな核を持ったいわゆる幼若な扁平上皮が多く見られたため、扁平上皮癌の疑いがあった。飼い主の方と相談の上、早期の腫瘤を含んだ中趾骨遠位の関節からの断趾手術に踏み切った。(術後写真⑤)
病理組織検査の結果はやはり扁平上皮癌であった。この腫瘍は完全に切除され、周囲の血管内に腫瘍細胞は見られなかったので、良好な経過を示す可能性もあるが、爪周囲の扁平上皮癌はしばしば所属リンパ節や肺への転移も知られているため、念のため定期的な検査をしていく必要があるでしょう。
写真①
写真②
写真③
写真④
写真⑤