5歳の日本猫が食欲元気がないということで来院。体温は40℃と高熱で中腹部には3cm程のマスが触知された。以前3月に細菌性化膿性肉芽種性腸炎が回盲結口部にマス様病変を形成しており、病変部切除後、結腸回腸吻合術を実施したことがある。今回もそれの再発と考えられたが、X線検査やエコー検査後の試験開腹による探査で、腹腔内の腸間膜に広範性に多数の小マスと2~3cmのマスが数ヶ所存在し、腹水も貯留していた。細胞診では好中球とマクロファージがほとんどを占め、好酸球が散見された。一部の腫瘤を摘出し、病理組織検査をした結果は、細菌感染が原因の炎症性病変が線維芽細胞や膠原繊維の増殖を伴って、硬い腫瘤を形成していたことから、猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症と推察されたとあった。なかなか耳慣れない病名だったため、大学病院の臨床病理の先生に伺ったところ、かなりの難治性の疾患で治癒は余り期待できないとのコメントだった。但し、2種類の抗生物質にステロイド剤を加えて治療する必要があるということで、細菌感受性テストの結果がマイナスと出たことから嫌気性菌にも留意した薬剤も投与しているが、一時は食欲もなくなったため、食道チューブを装着しつつ、強制給餌も行い、現在は元気食欲が出てきて、改善の兆候が出てきた。代替療法としてホモトキシコロジーなどを併用しているが、ここまで改善するのに1ヶ月近くかかっている。やはり難治性の極めて珍しい疾患の1つであろう。
写真①腹膜に粟粒性に存在する腫瘤
写真②2cm大の腫瘤
写真③膵臓に存在した腫瘤(鉗止の先)