猫の消化器型リンパ腫

13歳の日本猫が2日前から下痢と食欲廃絶で来院した。飼い主によると1ヶ月前より痩せてきたということだった。以前は3kgあったのが現在1.8kgとなっていた。腹部触診で中腹部にマス(腫瘤)が触知された為、ルーチン検査と画像診断を一通り実施した結果、軽度の貧血と白血球が73000とかなりの増加(好中球の左方移動・単球増多・好酸球増多・リンパ球増多)がみられた。また中腹部のマスは腸管であることが分かり、腸管壁の重度の肥厚があった。エコー検査で構造上この部分は回盲結口であることがわかった。またこのマスは炎症性の肉芽腫や腫瘍が考えられたが、小さめの石のような異物も腸管に存在していたことから、通過障害も考えられたので、飼い主の同意の下、開腹手術になった。マスは盲腸部に存在しており、約4cmほどの腫瘤であった。摘出手術はマスの前後5cmほどのマージンをとって切除した。その後腸管マスの割面のスタンプ標本を染色して鏡検したところ、沢山のリンパ球と好酸球が存在していた。リンパ球は中リンパ球が主体だった。いずれにしても腸管にあれだけ多くのリンパ球があること自体が異常であり、リンパ腫の可能性が高かった。術後は一般状態は急速に改善し、2日目からは流動食を完食するようになった。但し、回腸・盲腸・結腸をトータル15cm程切除しているため、下痢はしばらく続くが、来院時の水溶性下痢よりは少しづつ改善してきている。

病理組織検査結果:消化器型リンパ腫。グレード分類では Hight -intermediate grade lymphoma つまり分化型としては低~中分化型リンパ腫ということになり、悪性度の高めのタイプのリンパ腫と言える。

この先はPCR・遺伝子検査で、クロナリティーを調べることによりTリンパ球かBリンパ球かを確認することで化学療法の選択と予後や寿命がある程度予測できる。      術後8日目に退院し、クロナリティー検査が出るまでの間ステロイドで治療をすることになった。

 

腹部ラテラルX線検査

中腹部のマス及び1.5cm程の異物(矢印)

 

 

超音波検査

回盲結口部の空腸壁と盲腸壁が肥厚している

 

 

 

超音波検査

空腸壁の肥厚

 

 

 

 

超音波検査

空腸内の異物

 

 

 

 

回盲結口部の腫瘤

 

 

 

 

腸間膜根のリンパ節の腫大

 

 

 

 

腫瘤を含め15cm切除した

 

 

 

 

術後の腸管縫合部が見える。

 

 

 

 

腫瘤の横断割面を示す

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