最近になって体重が減少、1週間前から元気食欲なく、たまに嘔吐、軟便という主訴で来院。体重は3年前4.7kgあったものが、現在3.7kgに激減していた。血液検査では赤血球数110万/μl、HCT6.3%、総白血球数3070(好中球210、リンパ球1970、単球890、好酸球0、好塩基球0)血小板5万と全ての血球が著しく低下していた。またウイルス検査では猫エイズウイルスが陽性で猫白血病ウイルスは陰性だった。尿検査では潜血があり、尿比重が脱水をしているにもかかわらず低かったため、膀胱炎や腎機能低下があることが推測される。便検査では回虫卵が検出され、回虫症で嘔吐や軟便があった可能性がある。重度の汎血球減少症の原因を知るために、飼い主の方に説明し、同意が得られた為、骨髄検査を実施した。骨髄のバイオプシーをして、採取した骨髄をスライドグラスに塗抹し、染色して鏡検したところ、赤芽球系が全体にやや低形成で特に幹細胞以下の芽球が少ない、また骨髄系(顆粒球系)は正常の分布をしていた。血小板の元の巨核球はほぼ正常の数が分布していた。そこで言えることは骨髄内では赤血球のやや低形成はあるが赤血球は作られており、好中球も血小板も正常に作られているにもかかわらず、末梢血中にごく少ないと言うことは、免疫介在性にこれらの血球が壊されていることになる。勿論骨髄内には腫瘍細胞は存在しないし、骨髄の細胞充実度もそれほど悪くはないので、骨髄腫瘍でも骨髄癆でもない。骨髄内の細胞形態の異常もないので、骨髄異形成症候群でも無いようなので、診断名は免疫介在性汎血球減少症ということになる。治療はまず輸血を実施し、その後徹底した免疫抑制剤を使用するが、猫なのでまずはプレドニゾロンを4mg/kg投与から始めた。現在の状態は好中球がいくらか増え、食欲元気が出てきて、順調に経過している。