高齢のトイプードルが数ヶ月に亘る膿様の耳漏で元気もなくなっていた。レントゲン検査では骨胞内が充実性の物質で埋め尽くされており、耳道洗浄後の観察でも一見チーズ様の物質が充満していた。細菌感染を伴った中耳炎が存在し、中耳内には何らかの物質があったため、耳道内の環境の改善と、中耳内の精査のため耳道切開を実施した。その結果、中耳内には白っぽい肉片のような物質(写真①)がかなり存在していたが、そのほとんどを取り出すことが出来た。中耳内は元通りの空間が取り戻せ、洗浄などを繰り返し実施したことで、内側の汚い物質はほぼ完璧に近く取り去ることが出来た。(術後の写真②)しかし、取り出した肉片(写真③)の病理組織検査の結果は耳垢腺癌であった。この腫瘍は犬では珍しく通常は耳垢線種という良性のものが多い。ただこの子の耳垢腺癌は高分化の傾向があるので、ある程度経過が良いかもしれないが、再発に充分注意が必要だ。
写真①
写真②
写真③