中年の雄の雑種犬が背側の皮膚に大きな腫瘤が出来たということで来院。FNA(針生検)による細胞診では肥満細胞腫という皮膚癌だった為、手術により切除をすることになった。ところが手術当日の術前のレントゲン写真で膀胱内に2つと陰茎尿道内に1つ金平糖状の結石が見つかり、そちらも手術することになった。肥満細胞腫は病理組織検査でグレードⅡだったが、完全切除だったため、マージンには腫瘍細胞の脈管浸潤なしという結果だったが、一応定期的検査を実施することになった。
そして結石は分析の結果、とても珍しいケイ酸塩(シリカ)の結石だった。この結石は金平糖状を呈するが、時にストルバイト(リン酸マグネシウム・アンモニウム)結石や尿酸アンモニウム結石でも同様の形状を呈する。またケイ酸塩を豊富に含むトウモロコシグルテンや大豆粕の大量摂取にも関係していると言われている。雄に多くGシェパードやオールドイングリッシュシープドッグ、G・レトリーバー、L・レトリーバーに認められている。尿が酸性から中性で形成されるので、再発を防ぐには尿をアルカリに傾ける食事療法が必要となる。国内で手に入るものとしては、ヒルズのU/Dが最も適当な療法食といえる。
下の写真は肥満細胞腫の術前術後と膀胱内から取り出した大き目の結石と尿道内の2つの結石で、いずれもシリカ結石でした。