10歳の去勢雄のヨークシャーテリアが健康診断の際にX線検査とエコー検査により、左腎臓の腫瘤と肝臓の外側右葉のやや高エコーのマス様病変が見つかった。左腎の腫瘤のFNA(針生検)では採取された細胞が少ないのと、線維細胞様の非上皮系細胞が少数とわずかな好中球くらいしか見られなかった。炎症性の腫瘤ではないので腫瘍の可能性が高かった為、血液検査や尿検査、さらに血管造影をして、腎機能が正常で右の腎臓も機能がしっかり働いていることを確認したうえで、飼い主の方の同意も得られたため、腫瘤のある左腎の全切除および肝マスの部分切除による両方の病理組織検査をすることになった。術後も順調に回復し、念のため腎機能の保護の意味もあり、点滴治療を数日して退院となった。術後の病理組織検査での診断は左腎の腫瘤は線維腫症ということだった。線維腫症とは線維組織の良性腫瘍、反応性増生、特発性過形成等の総称とされる。治療は一般的に切除によって治癒するとある。肝マスの病理組織検査は確定診断には至らなかったが、肝細胞癌が形成されつつある可能性もあり、慎重な経過観察が必要とのコメントだった。 写真はX線写真(見やすいため血管造影写真)と腎・肝のエコー検査の写真、術中・術後の左腎と肝マスの術前術後。