かなり老齢の日本猫が慢性の皮膚炎があり、舐め壊してただれているということで、抗生物質等で治療していたが、一向に良くならないので、思い切って皮膚バイオプシーによる診断をすることになった。病変部は両前肢の手掌部とその外側また手根内側にも痂皮形成や潰瘍をともなっており、頸部腹側や左前肩部の皮膚にも糜爛、痂皮、出血などが見られた。4ヵ所のパンチバイオプシーをした皮膚病理検査の結果、診断は「表皮内扁平上皮癌(ボーエン病)」であった。猫では稀にしか発生がないそうだ。単発性で局所的、また転移の証拠がなければ、外科的切除で良好な場合が多いとされているが、この患者さんは複数で足先の複数広範囲の発生なので、外科切除は難しい。また放射線治療なども慢性腎不全のある猫さんなので、全身麻酔がかなり難しい。そこで局所の外用療法(イミキモドクリーム)を選択し、始めている。
下の写真はそれぞれの病変部を示す。