7歳の雄の日本猫が1週間くらい前から食欲がなく、嘔吐があるという事で他院にて受診し内服薬で治療を受けたが、芳しくなかったため当院に転院。来院時は食欲元気なく、嘔吐、発熱があった。血液検査で、ヘマトクリット12.6%(再生像あり)白血球はストレスパターン以外は異常なし。血液化学検査では総ビリルビンが高く、黄疸があった。赤血球の寄生虫のベクター検査はすべて陰性。クームステスト(-)。X線検査では脾臓のマス様病変が認められ、エコー検査によりそれが確認されたため、ニードルバイオプシーをしたところ、細胞診の結果は赤血球やリンパ球を貪食している類円形から多形性の大型細胞が多数みられ、核の異常として複数核や奇数核をもったいわゆる多核巨細胞が多く認められた。貧血が重度なため輸血をしたが、翌日ヘマトクリット22%だったものが2日目には17%になり、二度目の輸血を実施。免疫介在性溶血性貧血による黄疸とも考えられたため、ガンマーガードによる治療もしたが、更に貧血をしてきたので、三度目の輸血も行った。そこで脾臓摘出手術を行い、その病理組織検査を行ったところ、赤血球貪食性組織球肉腫という診断が出た。この腫瘍はかなり悪性度が高く、転移性も高いので、厳重な経過観察が必要。またこの腫瘍は猫では非常に珍しい腫瘍で症例発表や治験例がごく少ないため、今後の治療が難しいが、4回目の輸血が終わった後、とりあえずは脾摘後1週間のところで、ステロイドの使用開始。ロムスチンの併用についてのご説明もさせて頂きましたが、それをやっても生存期間が107日という報告があったため、それ以上の治療は希望されず、5回目の輸血後、自宅で看取ることを選択された。
腹部のX線写真(脾臓のマスの確認)
脾臓のエコー検査(大小のマス病変)
摘出手術中の脾臓