8歳の大型犬が外傷による急な右前肢の跛行で来院した。整形外科専門担当獣医師の触診やX線検査等の診断で靱帯損傷の疑いがあったため、非ステロイド性の抗炎症剤の内服をしたが、少し改善したものの跛行は相変わらず存在した。X線検査で当初より上腕骨遠位にわずかな骨融解像があったが、その後の検査でその部分がより明確な骨融解となり、さらに外側だけでなく、内側にも骨融解が見られるようになった。それと同時に跛行の程度もより重度になってきた為、腫瘍科の専門医と相談し、数日後に骨のパンチ生検を実施。細胞診と病理組織検査で上腕骨遠位の骨の非上皮性悪性腫瘍という事が分かった。非上皮性悪性腫瘍の中には骨肉腫も含まれるが、確定診断は得られなかった。そこで飼い主の方と相談し、いずれの骨腫瘍も今後の足の痛みが更に悪化して行くことと、それに対処できる痛み止めには限界があること、また骨の悪性腫瘍の為、内臓への転移の可能性が十分考えられるので、早期の内に断脚手術をすることで、痛みをとってあげることができるのと、手術後の抗がん剤の投与で、他への転移した癌細胞を叩いていくことで寿命が伸ばせる可能性があることなどをお話した結果、断脚手術を実施することになった。