猫の口腔内の扁平上皮癌

左側の口が腫れている、という主訴で13歳のネコが来院された。

口腔内の左側上顎歯肉に腫脹病変部位を認め、その一部は感染により排膿・壊死をおこしていた。

 

 

麻酔前スクリーニング検査を実施後、全身麻酔下にて病変部位の組織生検をおこなった。

病理検査の結果は【扁平上皮癌】であった。

 

 

扁平上皮癌は、猫の口腔内に発生する悪性腫瘍のなかでは最も多く発生すると報告されている。(発症平均年齢は11.6~13.5歳)

 

 

一般的に猫の口腔内扁平上皮癌は犬と同様に局所リンパ節、遠隔部位への転移率は低い。

そのため、病変局所のコントロールがとても重要である。

治療方法は発生部位・病変の大きさなどによってことなるが、早期に発見された症例は外科切除が適応になる。

 

しかし、診断時にはすでに腫瘍の増殖が進行し、外科切除の適応外になっていることも少なくない。

 

そのような症例には、疼痛や腫瘍の増大に伴う合併症の緩和目的で放射線療法が適応となる。

しかし、猫の口腔内扁平上皮癌は他の内科治療も含め、治療は困難を極め、全体的には予後が不良である。

 

当院では、猫の口腔内扁平上皮癌に対し、切除可能であれば外科治療を実施し、そのほかにも内科療法(リン酸トラセニブ、非ステロイド性抗炎症剤)を実施している。

 

また、自力採食が困難になった症例に対して、飼い主様と相談の上、経食道チューブや胃ろうチューブを設置することもある。

 

 

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