動的右室流出路閉塞の猫

17歳の猫が
『3ヶ月前から耳のかさぶたが治らない』
との主訴で来院されました。

耳のかさぶたは両耳にありましたが、特に右耳からの出血が多く猫もそこを気にして引っ掻くために出血を繰り返してしまい、エリザベスカラーをして引っ掻くことを防いでもやはり出血を繰り返すということでした。
耳の細胞診検査では『扁平上皮癌疑い』でした。
(この猫の毛は白色でしたが、白色の猫には耳の扁平上皮癌が比較的多く見られます


血液検査では慢性腎障害Stage2でした。
身体検査ではハッキリとした心雑音が確認されましたが、こちらは2年前より他院にて心筋症との診断から内服薬を続けているとのことでした。

エリザベスカラーをしていても出血を繰り返し、猫のQOL(生活の質)が低下している状態でした。飼い主様も出血を繰り返す猫を見ていて精神的に辛かったと思います。しかし、17歳という高齢になっていること、以前より心臓病(心筋症)との診断で治療を受けていることから麻酔をかけることが心配とのことでした。
そこで心臓の精査のために、レントゲン検査、心電図検査、超音波検査を行いました。
レントゲン検査、心電図検査では異常所見はありませんでした。
超音波検査では心筋肥大は無く、心臓の運動性も異常はありませんでした。
ただし、『動的右室流出路閉塞』というものがみられました。
これは右心室から肺動脈にかけての流出路が狭くなる時があるために、血液の流れが高速になってそこから雑音が生じているというものです。

この状態であれば心臓に関して麻酔は問題なく行えると判断しました。

手術は問題なく終了し、病理組織検査の結果は『扁平上皮癌』とのことでした。

猫の聴診は犬よりも難しく、雑音があっても正常であったり、雑音が無くても異常があることがあります。慎重な判断が必要とされます。

コメントは停止中です。