犬の閉塞性子宮蓄膿症

子宮内に多量の膿が貯留してしまった状態が子宮蓄膿症です。
多くの場合、陰部からの排膿がみられるために飼い主様が気づいて病院に来院されます。しかし、陰部からの排膿が無いとまさか子宮に膿がたまっているとは思わないでしょう。

 

「昨日から食欲・元気が無い」という事で、12歳の柴犬が来院されました。

身体検査をしてみると腹部が少し張っている状態でした。血液検査では、白血球数が上昇し、CRP(急性炎症のマーカー)が非常に高値になっていました。レントゲン検査、超音波検査で子宮内に多量の膿が貯留している事が判明したために緊急で手術をすることになりました。
✳︎排膿ができていない場合、膿により子宮が重度に拡張して場合によっては子宮が裂けてしまい腹腔内に多量の膿があふれだします。

開腹手術で卵巣・子宮を摘出した翌日からすぐに元の元気に戻り食欲旺盛になりました。

 

この柴犬さんは、この1ヶ月前に予防接種のために来院されていて、その際に陰部が腫脹している事を指摘しました。どうやら以前より発情兆候(生理)が微弱で分かりずらかったようです。

飼い主様には発情出血後の約2ヶ月以内で食欲がない、元気がない、水をすごく飲む、吐く、下痢をするなどの症状があった場合は『子宮蓄膿症』かもしれないのですぐに来院するように伝えていました。

まさに今回1ヶ月くらい経って、食欲がなくて、元気が無くて、水をよく飲んでいたので

『もしかしたら、先生が言っていたやつかもしれない』

との事で来院されたという流れです。

発情後の卵巣は約2ヶ月間の黄体期がありますが、この期間は子宮内で細菌が増殖しやすい環境になっています。陰部からの排膿が無い場合でも上記のような症状がある場合は、すぐに来院してください。(特に排膿されない閉鎖性子宮蓄膿症の)場合によっては子宮が多量に貯留した膿のために裂けて腹腔内に漏出し、腹膜炎や敗血症で命を落としてしまうこともあります。

 

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