呼吸が苦しそう、よだれが止まらないという主訴で8歳の猫ちゃんが来院されました。
来院時は開口呼吸をしていたためにまずは呼吸を安定化させる目的で酸素室にて高濃度の酸素吸入を行いました。しかし、酸素化をしても呼吸は落ち着かないため胸部レントゲン検査を行いました。
レントゲン検査では食道内に異物の存在を疑う所見があり、そのために呼吸困難になっていたと考えられました。
普段、異物誤食の場合はまず、催吐処置(薬剤を投与して吐かせる処置)によって、異物を取り出すことを検討しますが、今回の場合は食道を閉塞させていたので、内視鏡を口から挿入し、食道から異物を取り出す処置を行うことになりました。
内視鏡処置の準備をしていたことろ、猫ちゃんが突然口から大きな毛玉を吐き出しました。毛玉を吐き出してからしばらくして呼吸は安定していったので、特別な処置をすることなく、同日中に猫ちゃんは退院しました。猫ちゃんは毛玉によって食道が閉塞していたのです。
大きな毛玉を分解してみると、中にはびっしりと密度の高い毛の束と、少量のキャットフードが押し固められたものが密集していました。猫にはグルーミングといって自らを毛づくろいする習性があり、定期的に毛玉を吐き出す猫ちゃんも多くいます。今回のように、毛玉が大きくなるまで吐き出せずにいると、食道を閉塞させてしまうこともあります。毛玉を作らないためにも、定期的に猫ちゃんにブラッシングをしてあげることをお勧め致します。