軟部組織肉腫に対して内側膝動脈皮弁により切除をした犬の1例

小型犬(12歳)の後肢に約3cmの軟部組織肉腫が見つかりました。術前の組織検査ではグレード1との診断になっています。腫瘍のある部位・大きさを考えると拡大切除は難しいため、できる限り(側方向には半周くらいまで、深部方向も可能な限り)での切除を行うことにしました。

腫瘤を切除すると、術前の想定通り皮膚を寄せることができなかったため、大腿部の皮膚を使用して切除部位を閉鎖しました。これは”内側膝動脈皮弁”と呼ばれるものですが、皮弁の部分の長さが長いほど先端への血液供給が少なくなるために壊死を起こす可能性が高くなります。

今回、術後も順調で毛並みは変わったものの歩行も問題なくできています。

軟部組織肉腫はグレード分類によりますが、low gradeであった場合は側方2cm、底部マージンは筋膜1枚で切除することで完全切除できる可能性が高くなるとされています。また、再発を繰り返すたびに悪性度が増すことが知られています。このことから初回手術でできる限りの切除範囲を求められますが、四肢では皮膚に限りがあり可能な限りでの切除になります。もしも再発した場合は断脚も考えなければいけません。

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