アメリカ獣医内科学会腫瘍学専門部会元会長、アメリカ獣医内科学認定専門医(腫瘍学および内科学)でコロラド州立大学獣医生命医学部名誉教授であり、Cancer Care Specialistsという二次診療施設で診療しているDennis W.Macy先生の国際セミナーに出席してきました。
先生の癌罹患動物に対する基本的な治療方針は、癌を完全になくす(根治させる)ことだけが目的ではなく、癌が体に多少残っていても、それが大きくならず留まっているのならば、しかも動物が快適に生活できているなら、その状態を維持して、できる限り寿命を延ばしてあげられる、より副作用のない治療を選択して、それを続けるということなのです。
その具体例をご紹介しますと、 ①化学療法剤の癌への局所療法: 全身的に投与するよりも、癌の病巣に直接作用させるので、抗癌作用の効率が良く、副作用がより少ない。 ②癌が育つために必要な血管の成長を止める作用のある分子標的薬(成長阻害剤)を併用することで癌を大きくさせないようにする。 ③抗血管新生薬(非ステロイド性抗炎症剤・COX2阻害剤)とメトロノーム式化学療法(少量頻回投与)で穏やかに治療して癌を育てなくする。 ④凍結手術や温熱療法: 皮膚(肢端部含む)や鼻鏡、眼瞼、肛門周囲、口腔内の腫瘍に用いることで、身体の機能不全や機能低下が起こるような外科手術を避けることができる。 ⑤犬の悪性黒色腫(メラノーマ)のDNAワクチン療法により、従来の治療法と比べ、安全にそして寿命が格段に延長することが証明された。
どれも体に優しい癌の治療法だと思いませんか? これからの抗癌治療はこのように、より副作用が無く、患者さんがより永く快適に生活できるような治療方法の開発が進んでいくと思います。
講師を囲んでのウェルカムパーティーに出席した写真です。左から3番目がDr.Macyで右から4番目が私です。