11月29日から12月1日の3日間、延べ18時間の「究極の腫瘍内科学」というタイトルの国際セミナーに出席してきた。講師はワシントンDCにある4軒の動物病院で診療をする臨床家であり、アメリカ国立ガン研究所付属施設の上級研究員でもあるチャンド・カーナ先生です。
講義の内容の概略を以下にご説明させて頂きます。
今までのがん治療はQOLを良くする目的のための治療であった。また細胞毒性のある化学療法を人で使っていたものを動物にも応用していた。しかも人と同様の反応があったにもかかわらず、完治には至っていない。また人では化学療法を強化して副作用が出ても、骨髄移植などの対処法があるが、動物ではこれが簡単にはできない。そのため副作用の出ないようにする使用や費用を抑えるなどの制限要素があったため、そこまでしかできなかった。そこでこれからは「がん」の治療目的や考え方を変えて、その”がん”の生存率(治癒率)を主目的に考えた治療をしていくことで、長期生存の可能性を期待した治療をしていくようにして行こうというもの。
「がん」の原発巣は今までのように外科手術/化学療法(但し低用量使用のメトロノーム療法の応用)の単独か併用、それに放射線療法の+/-が主体になるが、その「がん」が転移を起こした場合、あるいは転移の可能性のある微小転移巣(顕微鏡的転移)のあるものに効果のある安全性の高い薬剤がこれから近い将来、次々に現れてくるでしょう。これらの薬剤には免疫療法薬、血管新生抑制剤、低分子化合物、シグナル伝達阻害薬などがあり、アメリカでは数ヶ月単位で新しい薬剤が商品化する傾向があるそうだ。近い将来これらの治療のターゲットのはっきりした薬剤は副作用の心配のないものですし、今までの低用量メトロノーム化学療法に加えることで、生存率(治癒率)が上昇していくことになるでしょう。
今回のセミナーでは近い将来沢山出現してくる薬剤の選択と使用が出来るようになるために必要な、がんの生物学、免疫学、分子病理学、遺伝子発現様式や変異、それらの機序、そして現在応用している新しい薬剤の使用法などを勉強した。
日本で現在使用できる薬剤もいくつかあり、海外から個人輸入できるものもありそうなので、当院でも早速調べて応用して行くつもりですので、ご期待下さい。